季刊まちりょくvol.16
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26art reviewやんや 仙台市の老舗劇団「麦」の第101回公演。昨年、創立50周年という節目を経ての公演である。「祖母と父母と俺と妹」というタイトルから、この物語を想像してみる。舞台は、ある町のある家のリビングルーム。この空間で、これからどのような声が融合し、感情が交錯しあうのだろうか。向かって右側に置かれた食卓と5つの椅子、左半分を占めるソファ。舞台でありながらも日常でもあるこの基本設定。演劇の愉たのしみの1つに、舞台上と客席との空間や次元の違いを、肌で感じるということがあると思うのだが、この公演は目の前の整然としたリビングルームが〈我が家〉なのだ。ここに、作・演出の熊くまがい谷盛さかり主宰の真摯な挑戦を、私は見る。  物語は日常の何気ない会話から始まる。1つだけ威厳を感じさせる椅子に座っている祖母。嫁(母)と孫(俺と妹)との関係にぎくしゃくしたものがないことが伺われる。一家の柱である息子(父)は隣りの空間で新聞を読んでいて、めくる音だけが存在を示す。次に、この息子とその妻との2人だけの会話場面へと移行して、核の部分へと入ってゆく。ここからは夫の会社の内情を実は知っていた妻と、部下をリストラする役目をさせられたことにより、会社への不信感、上司への不満に悩む夫との、リアルな会話が際立つ場面だ。会話と会話の間に隙がない。夫が会社を辞める理由は確かにわかるが、現実は簡単ではない。しかし、2幕では妻と祖母がタッグを組むことにより、「辞める」が実現する。男の考えと女の思いが、ここでぶつかる。この後、退職した男の家にやって来たのは、彼が再就職先を斡旋した元部下の女性2人。東家庭という温ぬくき空間劇団麦 第101回公演「祖母と父母と俺と妹」斉藤 梢(歌人)仙台・宮城で開催された文化事業をレビュー(批評)としてご紹介します

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