季刊まちりょくvol.16
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2 2007年に開催された第3回仙台国際音楽コンクールピアノ部門で優勝し、現在ドイツを拠点に活躍中の津田裕也さん。7月上旬、日本各地での演奏会のため一時帰国中のところをまち歩きにお誘いした。 散策は、仙台市泉区にある賀茂神社からスタート。江戸時代の元禄年間に塩竈から遷座された歴史のあるお宮である。 幼稚園に通っていた頃から住んでいるこの地域は、まさに津田さんの地元。賀茂神社も、「家族で初日の出を仙台港のほうに見に行って、その後はかならずここに初詣に来ていました」というお正月、また「どんと祭」など、折にふれて訪れていたなじみの場所だ。 現在も、ドイツから帰国して仙台の実家に滞在する際には、ここによく散歩に来るのだという。「緑が多くて、手ぶらで歩いていると気持ちがいいんですよ」との言葉どおり、目も心も洗われるような緑が広がる。 津田さんによれば、この周辺に新しい道路ができたり、商業施設が開店したりしてまちの様子は変わってきたとのこと。しかし、凛とした雰囲気の境内は時間が止まったかのよう。参道の木立からはセミの声が聞こえてきて、梅雨がまだ明けきらないとはいえ「日本の夏」がここにある、という印象をおぼえる。 賀茂神社から東へ少し行ったところに、津田さんのもうひとつの思い出の場所「長命館公園」がある。中世にこの地を治めていた領主の館が建っていた場所で、こんもりとした丘一帯が公園として整備されている。地元では「風の子公園」という名前で親しまれており、津田さんは子どもの頃によくここで遊んだそうだ。 津田さんの案内で北側の入口から公園に入り、森に分け入るようにして階段を上っていく。ウグイスの鳴き声が心地よい。展望台に登ってみると、生長した樹木が視界を遮り、「以前はもっと見晴らしが良かったんですけど」と津田さんも驚いた様子。 そこでしばらく休憩を取りながら、現在暮らしているベルリンの話題になった。津田ベルリンでは練習や演奏会の準備のほか、さまざまな音楽家の演奏会を聴きに行ったり、オペラを観たりと、「向こうでしかできないことをやっている感じです」と話す。小学生の頃、「学校の廊下で鬼ごっこをしていて、ドアの縁に頭をぶつけて血が出て大騒ぎになりました」というエピソードも。ピアノのほかに水泳も習っていて、今でも時間があればプールに通っているという。

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