季刊まちりょくvol.16
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7 タウトの仕事場・工芸指導所は、現在の宮城野中学校(宮城野区五輪)のあたりにありました。「明るいすっきりした建物でなかなか広い」というのが第一印象。勤務は平日午前10時から午後6時まで。執務時間は平日が6時間(土曜日が3時間、日曜日は休み)と記していることから、2時間の休憩があったことがわかります。慌ただしい現代からすると何ともうらやましい限り! 勤務中に「小鳥が室のなかへ舞い込んで嬉々として囀さえずっている(中略)、それだから時間が実に愉快に過ぎていく」という微笑ましい光景も見られました。 タウトはしばしば休憩時間を利用して工芸指導所周辺を散歩しました。寒さをものともせず好奇心の赴くところに足を向けるタウトの姿が目に見えるようです。 「宮城野」と呼ばれたこの一帯は、タウト曰く「広々とした平野。ところどころに紅葉した楓の大樹。(中略)この辺は万事が田舎風で簡素だ、ロシアとよく似ている」。「簡素」は褒め言葉。そんなふうに仙台のまちを形容されると新鮮に感じられてきませんか? 「乳銀杏」として知られる「苦竹のイチョウ」を見物した際は、傍らの神社に奉納されている絵馬に注目し、また木ノ下の薬師堂(陸奥国分寺)では、絵馬、奉納された女性の髪の毛、狛犬、願掛けの草わらじ鞋などに目をとめています。日本人の信仰があらわれたモノに関心があったのかもしれません。薬師堂の仁王像については「MとA――つまり終止(死・暗)と始初(生誕・光)との象徴である」と描写しています。「阿あうん吽」をタウト風に表現するとそうなるのですね。工芸指導所の建物前にて。タウト(左から7人目)と所員たち。タウトの右隣がタウトを招聘した所長の国くにい井喜きたろう太郎、左から2人目がタウトの助手を務めた剣けんもちいさむ持勇。剣持はやがてインテリアデザイナーの草分け的存在となります。(写真提供/独立行政法人産業技術総合研究所)工芸指導所の跡地(仙台市立宮城野中学校構内)に建つ記念碑。「工芸発祥」の文字が刻まれています。現在の薬師堂仁王門。タウトが訪れたのは11月20日。日記には「黄に染った公いちょう孫樹と真紅の楓、それから碧く澄んだ空」と記され、お寺と自然のあざやかな対比が印象的です。仙台ではいろいろな品物が驚くほど廉やすい工芸指導所タウトの散歩コース ~ 宮城野、乳ちちいちょう銀杏、薬師堂→工芸指導所の目的や事業についてはP.5参照。タウトのひとこと in 仙台

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